季節は秋、枯葉も落ちきった細々とした木々に包まれる広場。
日はだいぶ前に落ちて真っ暗だった。
ある組織に属する彼らは夜間射撃訓練を実施中である。
暗視装置とレーザー照準補助機器・曳光弾を使用しての射撃訓練。
○○メートル離れた場所にある、人を模した標的に単発で射撃を行っていた。
強烈な発砲音の後、一瞬弾丸を視認できたかのような気がするが、
ほんの一瞬の為、射手からは曳光弾と言えども、ほとんど見えない。
普通弾になると全く見えないから、多少は効果ありのようだ。
他人が射撃した曳光弾なら、良く見える。
標的を貫通した後、やや弾道が乱れ、ある弾は天上に消え、
ある弾は大地に弾かれて闇夜に消え入った。
「射撃やめぇー!やめぇー!」
と、上官の声。
「射場向こうの斜面が燃えてるからぁー!」
なんと、曳光弾の跳弾が遠くの山頂付近の斜面に着弾、
枯れ草に引火したようだった。
枯れススキのブッシュ?が炎を上げていた。
直ちに人海戦術で持ってこれを消化し、大規模山火事は免れたのだった。
翌朝、安全を再確認すべく、全員横一列になって火事場を確認に向かった・・・
火事場周辺を調べていると、突然転倒する隊員一名。
「痛ってー!」
膝を抑えながら立ち上がり、何につまずいたのか?と、
半長靴で枯れ葉や、燃え尽きた灰・土を少しだけ掘り返してみる。
数センチ掘り返すと、三角形の・・
ちょうど桃の尻のような石の塊が姿を覗かせた。
他の隊員にも声をかけ、今度はエンピで掘り返してみた。
彫る事半時間。
そこから掘り出されたのは、古いお地蔵様だった。
大きさは、1mもあったらしい。
なぜこんなところからお地蔵様が?
この射場自体は、あまり古い歴史は無く、
山と山の間の谷を埋め立てて被弾斜面を造成し、整地したのだった。
その後・・有志が調べた所、某大震災で発生した土砂を
この射場を作るのに埋め立て土砂として利用した事実がわかった。
その時に一緒にこの地に運ばれて埋め立てられてしまったのだろうか?
上官曰く・・・
『あんな遠くの、山頂付近の斜面まで曳光弾が跳ねるハズは無い。
しかも、地蔵が埋まっていた周辺だけの枯れ草が終えただけで、
他には延焼していないのもおかしい。
もしかしたら、地蔵が見つけて欲しくて火を出したのかもしれないな・・・』
今では、射場を見下ろす山頂に祠が築かれ、地蔵が祭られている。
その射場を利用する隊員達は訓練の無事を祈願する為に、
そして、先の大震災で亡くなられた人々を弔う為に、
そこにお参りするのが通例となっている。
祠までは施設科の手で階段が造られた。
もちろん、走りこみのコースともなっている。
どの季節に参っても、隊員達が供えた花束や線香が絶えることは無いと言う。
今でも、隊員達を山頂から見守って...