私が学生の時実家を建て直すことになり、
今の太白区○×△にある社宅に4カ月ほど
住んでいた時のことです。
子どもの頃から金縛りにはあっていましたが、
じっとしていればやがて体が自由になるので、怖いと思ったことは
一度もなかったのですが、この時生まれて初めて金縛りで恐怖を感じました。
何気なくふと目を覚まして枕もとの時計を見ると、午前3時半でした。
ここですっかり目を覚ましてしまったら朝起きるのがつらくなると思い、
7時に目覚ましの時間がセットしてあるのを確認して、
もう一度眠ろうとした時です。
うとうとしかけたら、かすかに耳鳴りがしているのに気がつきました。
「あ、耳鳴りがしてる。」
と思ったと同時に、ボリュームを小から最大に引き上げるように、
キ−ンという大音量の金属音に変わりました。
ちょうど飛行機が離着陸するときのような音が、
耳元から頭の中いっぱいに広がりました。
それと同時にワ−ッと足から頭まで全身が動かなくなったのです。
「何?何?」
と慌てふためくうちに強烈な金縛りにかかったのだとわかりました。
隣に寝ている妹を起こそうにも、声にならないのです。
勿論体は全く動かすことが出来ず、どうやら自由になるのは目だけのようでした。
必死に体を動かそうとしているうちに、相変わらずの大音量の耳鳴りの音とは別に
すすり泣く声が聞こえるのに気がつきました。
その声は耳から聞こえるのではなく、私の頭の中に直接聞こえてくるのです。
悲しそうにすすり泣く女の人の声でした。
それだけではなく、私の寝ている足元に誰かがいる気配がします。
それはゆっくりと確実に私の体の上を上って来るのです。
私は恐怖で半狂乱でした。
その人は飛び降りて自殺したのだと頭の中に伝えてきました。
もう知っている限りのお経やら主の祈りまで唱えて、
「私のところに来ないで!」
と心の中で叫んでいました。
目を開けたら絶対後悔すると思い、目をきつくつぶり続けました。
お経が効いたのか金属音がだんだん小さくなり、
それと同時に体が動かせるようになりました。
女の人の気配がスーッと消えていくのがわかりました。
そのまま朝までまたあの金属音が聞こえないように、
布団を頭からかぶり耳をふさいで明るくなるのを待ちました。
月日がたって家が完成し、そこを引っ越した時
もうこんな経験はこりごりだと思い、忘れようとしました。
やがて結婚して子どもの手が離れ、働きに出ました。
あれ以来霊を伴う金縛りに時々会いますが、真言を唱えると解けます。
仕事の関係で西中田に行くため太白大橋を渡るのですが、
ふと目に止まった建物があの時住んでいた社宅だと気がつきました。
別の色に塗り変わり太白大橋に向かう大きな道路ができたので、
あの頃とは景色がまるで変わっでしまってわからなかったのですが、
たしかにそうでした。
あの女の人は今もさまよっているのでしょうか。